皆様、おはようございます。
これまでの社長メッセージ「データセンター」(2024 年 9 月 24 日)、会長レポート「日本におけるデータセンター事業の展開課題と当社の取り組み」(2025 年 10 月 20 日)、「業績予想の修正と今後の取組みと方針について」(2025 年 11 月 17 日)において、当社のデータセンター事業構想についてお伝えしてきました。本日は、その中でも重要なポイントである「蓄電所」についてお話ししたいと思います。
当社のデータセンター事業では、「環境への負荷を軽減するために、データセンターで消費する電力の約30%を同じ敷地内で太陽光発電を行って調達します。まさにエネルギーの地産地消です。さらに敷地内の蓄電所で蓄えた再生エネルギー余剰電力を夜間データセンターに供給するという、環境に配慮した設計としています。」とお伝えしてきました(2024年9月24日付け社長メッセージ「データセンター」)。
また、日本におけるデータセンター事業の展開課題のひとつとして「必要電力の『容量』と『時期』を早期に確定し、特別高圧受電に再エネ・蓄電・非常電源のポートフォリオをどう重ねるかが鍵になります。」と考えております(2025年10月20日 会長レポート「日本におけるデータセンター事業の展開課題と当社の取り組み」)。
その中で、当社の取組みとして、先週の会長レポート(2025年11月17日付け「業績予想の修正と今後の取組みと方針について」)において、「今回取得した京都府京丹後市での蓄電所の開発事業を皮切りに、蓄電所事業も積み重ね、2027 年度のデータセンター事業開始に向けて、蓄電所のノウハウを蓄積してまいります。」とお知らせしたところです。
蓄電所は、単なる非常用バッテリーではありません。蓄電所事業では、電力の安い時間帯に充電し、価格が高騰する時間帯に放電することで電気料金を平準化し、日中の余剰な再エネを貯めて夜間に活かすことで、再エネの価値を最大限に引き出します。また、万一の系統トラブルや災害等が発生した際には、データセンターを止めないための「最後の砦」として機能します。この意味において、蓄電所は「止めないデータセンター」を実現するための、表には出にくいものの極めて重要な“見えない主役”と言えます。
一方で、日本で蓄電所を安定したビジネスとして運営することは決して容易ではありません。系統接続の制約やルールの複雑さ、電力市場制度の度重なる見直し、地域ごとに異なる再エネ導入状況など、考慮すべき要素は多岐にわたります。「安い時に買って高い時に売る」という単純な取引だけでは収益が不安定になりやすく、長期投資として成り立たせるには、価格変動リスクや制度変更リスクを織り込んだうえでの綿密な計画と運用が不可欠です。加えて、蓄電池自体の導入コストや寿命、メンテナンスといった技術的・経済的条件も、事業性を大きく左右します。
こうした環境のなかで近年注目されているのが、「アグリゲータ」と呼ばれる企業の役割です。アグリゲータとは、全国に分散する太陽光発電所や蓄電所、さらには需要側の調整可能な負荷などを束ね、まるで一つの大きな発電所・調整力のように取りまとめて、電力市場や系統運用に参加する“司令塔”のような存在です。個々の設備だけでは小さく不安定な出力であっても、数多くを束ねることで出力のばらつきをならし、全体として予測可能性と安定性の高い電力供給や需給調整サービスを提供できるようになります。再エネ比率が高まるこれからの日本においては、電源の量を増やすだけではなく、それらをいかに賢く組み合わせ、時間と空間を超えて活用していくかが極めて重要であり、その要となるのが、蓄電所の高度な運用と、それを束ねるアグリゲータの存在だと言えます。
当社グループとしても、データセンター事業を進めるうえで、単に設備を建設するだけでなく、「電力をどう調達し、どう貯め、どう使うか」という視点から事業全体を設計していくことが不可欠だと考えています。
2027年度のデータセンター事業開始に向けて、着実に課題をクリアし、計画を進めてまいりたいと思います。何卒、引き続きのご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
2025年11月25日
北浜キャピタルパートナーズ株式会社
代表取締役会長兼CEO 前 田 健 晴
