平岡新社長に託す北浜キャピタルの未来─北浜に響く経済の鼓動

2025年春、北浜キャピタルパートナーズ株式会社は新たなステージへ歩みを進める。創業者である前田健晴氏が会長に就任し、わずか1年足らずで会社を大きく成長させた平岡佳明氏が新社長に就任。二代表制という新体制で、”21世紀の北浜銀行”というビジョンの実現に向けた挑戦が本格化している。世界と地域をつなぐ独自の事業展開やデータセンター事業を核とした3段階戦略など、これまでにない規模とスピードで拡大する当社の未来について、両代表が語る。(2025年6月インタビュー実施 聞き手、撮影:野口航志)

「北浜銀行の再来を目指して」前田会長の創業理念

──まず、北浜キャピタルとはどういう会社なのか、ご紹介をお願いします。

前田「もともと”21世紀の北浜銀行”を目指して設立した会社です。投資を通じて、豊かな社会と心をつくることを理念に掲げています。単なる収益性だけでなく、安全性、そして社会性。特に“5人の人を大切にする”という哲学──社員とその家族、取引先、お客様、地域社会、そして株主、この5者への誠実さを軸に、これまで事業を進めてきました」

平岡「私が共感したのも、その”社会性”の部分なんです。お金儲けだけじゃなくて、誰が幸せになるんだ?ってとこまで考えている。その発想に惹かれたんです」

──“北浜銀行”というキーワード、これは過去へのノスタルジーではなく未来に向けたキーワードということでしょうか。

平岡「おっしゃる通りです。“北浜銀行”は過去を懐かしむ言葉ではなく、未来へ向かって掲げているキーワードです。私たちが若い頃、大阪は”大大阪”と呼ばれ、北浜は日本の金融の中心地でした。銀行や証券、商社が立ち並び、まさに経済の心臓部だったのです。ところが2000年くらいになると大阪は疲弊してしまっていて、もう大阪には何も残ってないのではという空気が漂い、寂しいなと思っていた。前田さんと会った時に、前田さんも同じこと言ってくれたんですよね。だからこそ、私はこの北浜の地にもう一度、経済の鼓動を取り戻したいと思ったんです」

──気持ちが同じように重なったのですね

平岡「私には人脈がある自信があったので。前田さんに、私の人脈で絶対やりますからって大口叩いてですね。それで1年私に走らせてくれたら、1年後に結果出します、と。前田さんは私を信じてくれたんです」

──社名にも”北浜”、そしてドメインも”kitahamabank”ですよね

前田「はい。もちろん銀行免許を取るつもりという意味ではありませんが、”北浜銀行”という言葉を掲げることで、我々が目指す世界観を明確にしたかったんです」

平岡「例えば北浜銀行って言葉がなかったら、私はここまで、また違う観点でこの会社を見ていたかもしれません。名前って力ありますよ。”北浜銀行”って言葉に、私たちの覚悟と価値観が詰まっているんです」

異色の経歴がもたらしたスピードと多様性

──平岡さんの海外ビジネスでの経験が、北浜キャピタルの事業展開にどう活かされているのでしょうか

平岡「インバウンドを手がけていましたし、IT関連のOEMをやってました。だから、物事を”答えから逆算”して考えるタイプなんです。その考え方が、北浜キャピタルの今のプロジェクト、特にデータセンターやエネルギー開発にも活きていると思います」

前田「彼が入ってからの変化は本当に大きかった。伊賀の土地を取得したときは、規模が大きいし、どう使うのかって部分もあった。でも、次々にプロジェクトが立ち上がり、点が線になり、面になっていった。『平岡物語』の始まりでしたね」

平岡「本当は最初、点の集合体だったんです。伊賀の土地も、最初は『なんでそこで?』って思われたんじゃないでしょうか。でも、それが今では電力・通信が揃った”核”として機能する場所になってます。そこに台湾のAblecom Technology社、マレーシアのAmarillo社などの連携が入ってきて、”点”が”ネットワーク”として機能し始めました。これは海外ネットワークがあってこその動きだと思ってます。信頼できる人が、また信頼できる人を紹介してくれる。その連鎖が今の北浜キャピタルを動かしています。台湾やマレーシアの企業とも、そうしたご縁でつながってます」

平岡「私たち北浜キャピタルのやっていることって、表に出てないだけで、実は”世界”と直接つながってるんです。台湾で言えば、液浸式サーバーの技術。日本ではまだ”検討中”ですが、台湾では既に当たり前。しかも、環境配慮の観点からも都市型には不可欠になっていく。今、東北にもラボを設けて実証実験を始めていますけど、納期も1ヶ月レベルで回している。これ、日本ではかなり速いスピードです。そこは日本一早くできるって言っても過言ではない」

前田「日本のIT産業って、まだまだ”検討”の文化が強いんです。完璧じゃないと表に出せない。でも世界は違う。まず”検証”して走りながら改善する。それを平岡さんが持ち込んでくれた。私自身も正直、取得した伊賀の土地について規模が大きいこともあり、最初はどう使うのかって部分もあった。でも、平岡さんがそれぞれのピースを結び、全体像を形にしてくれた。束ねて推進する力があるのが平岡さんの強みですね。今ではこの流れが、会社の成長ストーリーそのものになっています」

平岡「ありがとうございます。でも私ひとりだと無理です。うちには優秀な副社長や取締役がいて、本当に全員”天才”だと思ってます。そのチーム力があってこそ、私は大胆に動けるんです」

データセンター戦略──3段階で攻める近・中・長期構想

──なぜ今、データセンター事業なのでしょうか

平岡「日本のIT赤字は、今や最大級の国家課題だと思っています。そこをどう打破するか。その答えが、“インフラを持つ”ってことだと私は思っています。クラウド、電力、通信、それらを自前で持つってことが、次の競争力を生むんです」

──伊賀のデータセンター構想は、2027年春オープン予定と聞いています。時間がかかる印象もありますが、どのように進めていくのですか?

平岡「具体的には、3段階構想なんです。ショートターム、中期、長期でターゲットを分けていて、たとえば2025年中にも稼働する小型案件を先に走らせる。インフラって時間かかるから、長期の軸はゆっくり育てつつ、今できることから始める。そのひとつがGPUサーバーを活用した”クラウドリソース販売”です」

──Amarillo社との提携も、その一環ですか?

平岡「そうですね。世界有数のクラウド企業と資本提携を結んで事業を始めます。GPUの時間貸しやクラウドの買い切りも含めて、これはまさに『自前のITインフラ』を持つという意味で、大きな転換点です。2025年7月上旬開始予定なので、それもまた期待してください」

──伊賀プロジェクトには、ホテルや観光の要素も含まれていると聞いています

平岡「そうです。観光は私の得意分野でもあるので、レジデンス事業とも組み合わせて、“滞在型デジタルインフラ拠点”を作っていくつもりです。データセンターだけではなく、地域の人々や来訪者にも価値が届くようにしていきたい」

「二代表制」という決断と経営哲学

──”二代表制”について伺いたいです

前田「私は会社全体の設計や財務、理念の部分を担っています。一方で、平岡さんのようにスピード感と国際感覚を持って事業を引っ張っていける人が必要だった。世界の企業と仕事をしていくのに、その担当が副社長じゃ駄目だろうと、二人で代表を務める”二代表制”を取ることにしました」

──補完ではなく、掛け算だったんですね

平岡「私は現場で動くのが得意。でも、会社の土台がしっかりしてないと、そこに大きな事業は乗らない。その点で、会長がドシっといてくれるのはめっちゃ大きいですね」

平岡「私にとってビジネスはパズルなんです。人脈、資本、技術、それらをどう繋いで一枚の絵を描くか。いくら点と点を繋いで線を作ってもブレるだけ。そのときに戻ってくるべき”核”がないと、その”核”が、北浜銀行っていうビジョンなんです」

前田「私も”北浜銀行”という言葉には、単なる懐古主義以上の意味を込めています。大義がなければ、結局は金儲けで終わってしまう。平岡さんはその部分に強く共感してくれましたからね」

人材とカルチャーの再構築へ

──ハード面の整備と並行して、人材やカルチャーについても変わりつつあると感じます

前田「はい。今は”人”の力がますます重要になっている。私は企業文化の基盤を整えるのが役割ですし、平岡さんが体現しているように、社員が主体的に動ける組織にしていく必要があります」

平岡「私自身は”仕事が趣味”みたいなタイプなんですけど、全員がそうである必要はないと思ってます。ただ、面白いと思える仕事に出会えたとき、人は一番本気を出せる。だから、私の役目は”面白くて意義のある仕事”をちゃんと用意することだと考えています」

未来への約束

──今後の成長戦略と、ステークホルダーの皆様への約束について、それぞれからメッセージをお願いします

平岡「私たちのやっていることは、まだ20〜30%しか伝わってないと思うんです。でも、これからちゃんと届けていきたい。私自身は口下手で人前で発信するのは得意じゃない部分もありますが、そういう部分は前田会長に任せて私は粛々と。でも100パーセント理解していただけるようになってくると、また安心感も出てくるでしょうし、この会社にかけようって思う気持ちも出てくると思う。その精度を深めるために、こういったインタビューや、IRの発信などは効果的にやっていこうと思います。発信も強化していくし、結果でも示していく。サンキャピタル時代から信じていただいている株主もいれば、今から入ってくる投資家の皆さんも含めて、信頼してもらえるような事業を進めていきます。社員とその家族、取引先、お客様、地域社会、そして株主、この”5方よし”の経営を、私はやり切ります。前田会長からも一言お願いします」

前田「私は一言。”ご期待ください”」

平岡「前田さんらしいね(笑) 本当に、ご期待くださいっていうのは。私はそこをちゃんと確実に皆さんの”5方よし”になるように固めます」

──検討から検証へ、構想から実行へ。北浜の地から世界を変える北浜キャピタルの物語は、ここからさらに加速していく。